付加価値を高めることによって原価率を下げようという発想を切り出されたのです。
そして「いくらウマくても、黙っていたらお客様は来ないよ」とも言われました。
先生は商売の先を見越して一歩ずつ、私たちにわかる・出来るやりかたで段階的なアドバイスをしてくださいます。
私どもは静岡県の大井川町というところで海の幸を中心とした 創業は昭和40年ですから45周年ということになりますか。 あるとき、地元の商工会の知人に相談を持ちかけたところ、 |
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先生の第一印象は、「鋭い人だな」ということでした。 実際に仕事をお任せしてみると、とてもこと細かに柔軟にサポートをしてくださいました。 経営者たるもの、誰しもホンネと建前というものがあります。 田中先生はご自分でも商売をなさっているだけあって、 二度ほど税務署の調査もありましたが、 |
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さて、税理士の仕事というのは一般的には「出て行くお金」のチェックが主なのかも知れませんが、 田中先生は「入ってくるお金」つまり売り上げに関して、非常に厳しい指導をしてくださいました。 「売り上げが伸びないのは社長の怠慢だ」と叱られたことを覚えています。 当店はもともと立地条件が悪いというハンディがありました。 町の中心から離れすぎているのです。 今は道の整備などで多少人通りも増えましたが、 繁華街のように偶然飛び込んでくるお客様はあまり望めません。 当店を目当てにわざわざ来てくださる常連様を開拓しなくてはならないのですが、 せっかくの常連様も年々高齢化が進み、 どうしても新規客を積極的に開拓してゆかなくてはならないという問題を抱えておりました。 私は職人上がりで、「とにかくいい材料を使っておいしい料理を作って喜んでいただければ おのずとお客様は増える」と思っていたのです。 というよりそれしか知らなかったわけで、当然原価率は非常に高かったのです。 それに対して、先生はまず原価率を下げるよう指示をされました。 もしも素材の質を落として原価を安くしろという指示だったら、 私は絶対に聞き入れなかっただろうと思います。 しかし先生の提案はそうではありませんでした。 先生自身が飲食関係の事業をなさっている関係もあるのでしょうか、 まず食べ物は絶対に美味しくなくてはならない、 味を落としたらお客様は逃げるということをよくご存知でした。 先生は「メニュー構成をしっかり見直して魅力的なものにして、 付加価値を高めることによって原価率を下げよう」という、 それまでの私にはまったくない発想を切り出されたのです。 新メニューのコンセプト、季節限定のセットメニュー、 そして広告用のキャッチフレーズなども先生自ら考えてくださいました。 |
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それから、新規客を掴むために「畳の上でのディナーショー」という 新しいアイディアを出してくださったのも先生です。 うちあたりで呼べるのはテレビに出るか出ないかのランクですが、 それでもお笑いや歌の上手な芸能人を招いて畳の上でディナーショーをやります。 遠くのホテルまで出かけなくても、畳の部屋でくつろいで美味しいものを食べながら笑いや歌を楽しめる。 地元の、特に高齢のお客様にはそういって喜んでいただいております。 先生の口癖のひとつに、「上客をつかめ」という言葉があります。 そういった方々は比較的味にうるさいです。 本物とニセモノの違いがわかるし、味を認めれば少々遠くまででも店を名指しで足を運んでくださる。 だから、そういう上客が外食をするとき三回に一回くらいは「みなと家で食べたい」と言ってくださるような、 とにかく美味いものを出せとおっしゃるのです。 これは料理人として心強い言葉でした。 そして先生は「いくらウマくても、 黙っていたらお客様は来ないよ」とも言われます。 「畳のディナーショー」のアイディアもそうですが、 先生は広告宣伝にも力を入れるよう指示されました。 チェーン居酒屋などを除いて、和食店の新聞折込チラシなどは あまり世間にないと思いますが、先生はチラシにも積極的でした。 クーポンや割引券をつけるのではなく、 魅力的なメニューを創造し、それをチラシに掲載したのです。 私たちも最初は効果に半信半疑でしたが、先生が是非にもとおっしゃるので ダメもとでチラシを打ってみたところ確かな効果がありました。 しかも、割引券もついていないチラシをお客様がわざわざ店に持ってきて、 「ここに載っているこのメニューが食べたい」と言われるのです。 メニューの力。これには私も驚きました。 チラシに関する先生の指導はこれだけではありません。 私どもの商売には、黙っていてもお客様が入るシーズンがあります。 新年会、歓送迎会、同窓会、法事、忘年会の時期などです。 こういう時期は予約である程度繁盛しますから、 「なにも今チラシを打たなくてもいいんじゃないの?」などと私などは思いますが、 先生は「お客様が来る時期だからこそチラシを打ちなさい」とおっしゃるのです。 考えてみれば、飲食店にお客様が黙っていても来る時期というのは、 お客様もよい店をいろいろ探しておられる時期でもあるのです。 そういうタイミングでチラシを打てば、新規客の開拓にうってつけなのでした。 法事などで当店をご利用いただくと、 「うちの法事のときもここを利用したい」などとご予約をいただき、 それが新しい常連様になられるということもありました。 |
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新規顧客は、常連客の多少に関わらず常に心がけていなくてはならないことです。 まずは予約を入れて頂き、 それが飲食店のあるべき姿だということが 最近では、当店も「予約がとりにくい」と A地区には7月に、B地区には8月にチラシを打つようにすればお客様も分散されるし、 先生は商売の先を見越して一歩ずつ、私たちにわかる・出来るやりかたで これからもよろしくお願いいたします。 浜料理みなと家 |